「いびきが気になるけれど、病院に行くのはちょっと抵抗がある」「できればお金をかけず、自力でなんとかしたい」――そんな声を多く耳にします。実は、いびきの多くは日常生活の中での工夫や習慣の改善によって、自分自身で軽減・改善できる可能性があるのです。
もちろんすべてのいびきが自力で治せるわけではありませんが、多くのケースでは原因を理解し、正しい対策を取ることで、改善の兆しが見えてきます。特に、生活習慣や睡眠環境の見直しは費用もかからず、今日から始められることばかりです。
この記事では、「いびきを自力で治すにはどうすればいいのか?」という疑問に応えるべく、医学的な知見をもとに具体的な対処法を7つの項目に分けて紹介します。無理なく続けられる対策で、静かな眠りとスッキリした朝を手に入れましょう。
いびきは自力で治せる?その前に知っておきたい基礎知識
そもそもいびきが起こる仕組みとは
いびきとは、睡眠中に空気の通り道である「上気道(鼻・喉)」が狭くなり、空気が流れる際に周囲の粘膜や組織が振動して音を発する現象です。特に舌の根元(舌根)や軟口蓋といった部分が緩んで気道をふさぐことが主な原因です。
睡眠中は筋肉の緊張がゆるむため、仰向けに寝ていると舌が重力で喉の奥に落ち込みやすくなります。この状態で呼吸をすると、狭くなった空間を空気が通過する際に「グーグー」「ガーガー」といった音が鳴るのです。
いびきの主な原因と生活習慣の関係
いびきの原因には、生活習慣や体質が大きく関係しています。以下のような要因が重なることで、いびきが発生しやすくなります:
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肥満によって首まわりに脂肪がつき、気道が狭くなる
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鼻づまりやアレルギー性鼻炎によって鼻呼吸が困難になる
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アルコールの摂取により、喉の筋肉が弛緩する
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睡眠時の姿勢が悪い(特に仰向け)
このように、日常の習慣がいびきの発生に直結しているため、逆に言えば生活改善によって自力での対処が可能なケースも多いのです。
医療介入が必要なケースとの違い
一方で、いびきの中には「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」のような医学的治療が必要な疾患の症状として現れているケースもあります。SASは、睡眠中に繰り返し呼吸が止まる疾患で、放置すると高血圧や心疾患、脳卒中のリスクが高まります。
以下のような症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診することをおすすめします:
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睡眠中に「呼吸が止まっている」と指摘された
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日中の眠気が強く、仕事や運転に支障が出る
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夜中に何度も目が覚める
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いびきの音が異常に大きい、または止まったあと急に鳴る
こうした場合は、いびきを単なる習慣として放置せず、早めに専門の診断を受けることが大切です。
ただし、こういった症状がなければ、自分で改善を目指すことは十分に可能です。
いびきを自力で治す7つの方法
いびきの原因が生活習慣や睡眠環境にある場合、医療機関に頼らずとも自力で改善できる可能性があります。ここでは、実際に効果が期待できる7つの方法を紹介します。
1. 寝る姿勢を見直す
いびきをかく人の多くが「仰向け」で眠っており、この姿勢が舌を喉の奥へ落とし込むため、気道をふさぎやすくなります。横向きで寝るよう意識することで、気道の圧迫が緩和され、いびきが軽減されることがあります。
抱き枕や背中に丸めたタオルを当てて寝返りを防止する方法も効果的です。また、枕の高さを調整して頭の位置をやや高く保つのも有効です。
2. 口呼吸から鼻呼吸に変える
口呼吸は喉を乾燥させ、粘膜の振動を強めていびきを悪化させます。鼻呼吸の習慣をつけることが重要です。
鼻づまりがある場合は、蒸しタオルを当てる、鼻うがいをする、鼻腔拡張テープを使うなどの対策を取りましょう。就寝時に口が開いてしまう人には「口閉じテープ」も有効です。
3. 適切な体重を維持する
肥満は、喉や首まわりの脂肪が気道を狭める原因になります。特にBMIが25以上の人は要注意です。
運動や食事管理を通じて体重を減らすことで、いびきの改善が期待できます。急激なダイエットよりも、無理のない生活改善を続けることが大切です。
4. お酒と喫煙を控える
アルコールは筋肉を弛緩させる作用があり、喉の筋肉が緩むことでいびきを悪化させます。特に寝る前の飲酒は避けるようにしましょう。
また、喫煙は気道の炎症やむくみを引き起こし、空気の通り道を狭くするため、いびきの原因となります。禁煙に取り組むことで、呼吸がスムーズになり、いびきの軽減に繋がります。
5. 枕や寝具の工夫をする
自分に合っていない枕やマットレスを使っていると、首が不自然に曲がり、気道を圧迫してしまいます。高さや硬さの合った枕を選ぶことで、首や喉の筋肉がリラックスし、いびきが減少することがあります。
理想は、頭部が5~6cm程度持ち上がる高さ。横向き寝でも快適に使える設計の枕がおすすめです。
6. 鼻の通りを良くするセルフケア
鼻の通りが悪いと自然と口呼吸になり、いびきが発生しやすくなります。以下の方法で鼻の状態を整えることが重要です:
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湿度を保つ(加湿器の使用)
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鼻洗浄(生理食塩水を使った鼻うがい)
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アレルギー対策(ハウスダストや花粉の除去)
また、就寝前に温かい飲み物や蒸気吸入をすることも鼻の通りを改善する効果があります。
7. いびき防止グッズを活用する
市販されているいびき対策グッズには、以下のようなものがあります:
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鼻腔拡張テープ:鼻の外側に貼って通気性を改善
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マウスピース(ナイトガード):下顎を前に出す構造で気道を確保
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横向き寝サポーター:無意識の仰向けを防止
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口閉じテープ:口呼吸を防止し鼻呼吸を促す
これらは医療機器ではありませんが、「いびきを自覚しているけれど病院には行きたくない」という人にとって、手軽に試せる第一歩になります。
自力での改善が難しい場合に考えたいこと
自力でできる対策を続けてみたけれど、「どうしてもいびきが改善しない」「むしろ悪化しているように感じる」というケースもあります。その場合、根本的な原因が生活習慣以外にある可能性が高く、専門的な視点からの判断が必要です。
いびきが治らないときのセルフチェック
次のような症状が見られる場合、いびきは単なる生活習慣によるものではなく、病的ないびきである可能性があります。
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毎晩大きないびきをかく
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寝ているときに呼吸が止まっていると指摘された
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朝起きても疲れが取れない
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日中に強い眠気や集中力の低下がある
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頭痛や喉の痛みが頻繁にある
これらは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の典型的な兆候です。気になる症状がある場合は、自己判断で放置せず、次のステップを考えましょう。
睡眠時無呼吸症候群との違い
SASは、睡眠中に呼吸が断続的に止まる病気で、高血圧・心筋梗塞・脳卒中などの重大な合併症を引き起こすリスクがあります。しかも、この疾患は自覚症状が乏しく、家族やパートナーの指摘がないと見逃されがちです。
SASはいびきと深く関係しており、いびきがそのサインとなることもあります。逆に言えば、「ただのいびき」と思っていたものが、命に関わる問題に発展してしまう可能性もあるのです。
SASが疑われる場合は、専門の医療機関で睡眠検査を受けることが重要です。
医療機関での検査や治療について
いびきや睡眠障害が気になる場合、耳鼻咽喉科、睡眠外来、呼吸器内科などで相談できます。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、「ポリソムノグラフィー」と呼ばれる検査が一般的です。自宅でできる簡易検査もあります。
治療法としては以下のような選択肢があります:
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CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
→ 寝ている間に空気を送り、気道を確保する装置を装着する方法 -
マウスピース治療(スリープスプリント)
→ 下顎を前に出して気道を広げる装置 -
外科的治療
→ 鼻や喉の構造に問題がある場合に行う手術
自力での改善が難しいと感じたら、それは“病気を早期に発見するチャンス”かもしれません。ためらわず、専門家の力を借りることも選択肢に入れておきましょう。
まとめ|自力で治すには「気づき」と「習慣化」がカギ
いびきは、単なる睡眠中の“音”ではなく、体が発する重要なサインです。特に生活習慣や睡眠環境の影響を大きく受けるため、正しく対処すれば自力での改善が十分に可能です。
今回紹介した7つの方法――寝る姿勢の工夫、鼻呼吸の習慣化、体重管理、飲酒・喫煙の見直し、枕の調整、鼻のセルフケア、対策グッズの活用――は、どれも手軽に始められるものばかりです。特別な機器や通院を必要とせず、今日からでも実践できます。
とはいえ、いびきが重度であったり、他の健康リスクが疑われる場合には、医療機関の力を借りることが何よりの近道です。自分の状態を正しく把握し、「自力でできること」と「医療の助けが必要なこと」を見極める視点も大切です。
いびき対策は一日で劇的に変わるものではありません。しかし、小さな習慣を積み重ねることで、静かな眠りと健やかな目覚めが手に入るはずです。まずはできることから一つずつ始めてみましょう。
参考サイト一覧(引用元)
- ねむケアラボ
いびき、睡眠時無呼吸症候対策.comいびきや睡眠時無呼吸症候群の各種治療法や取り扱い病院等紹介していきます。 -
厚生労働省 e-ヘルスネット|いびき
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-004.html -
独立行政法人労働者健康安全機構|睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
https://www.research.johas.go.jp/information/sas/ -
耳鼻咽喉科 鈴木医院|いびき・睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
https://suzuki-jibiinkouka.com/%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E6%99%82%E7%84%A1%E5%91%BC%E5%90%B8%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4%EF%BC%88osas%EF%BC%89 -
スマートドック|いびきの原因とセルフケア方法
https://smartdock.jp/contents/symptoms/sy017/ -
東京メディカルクリニック|いびきの原因と対策
https://www.c-takinogawa.jp/snore/cause.html -
おいかわ耳鼻咽喉科|いびきの原因と改善策
https://www.oikiiin.com/snore/